1ページの物語。
-友達以上恋人未満-



過去に2度恋人になった彼女とは友達以上恋人未満な関係になった。


定期的に2人きりで深夜に待ち合わせて何時間も話す。


けれどそんな彼女とは友達以上恋人未満。


そんな関係が2年目に突入した時だった。


いつものように待ち合わせて話していた時だった。


「私にはどんな人が合ってるかな?」


「そうだなぁ…」



いきなりの彼女の問いに少し困惑しながら応えた。



「恥ずかしさが勝っていつもお笑い混じりな方向に逃げるからそんな恥ずかしがり屋な所をちゃんと理解してくれる人がいいんじゃない?」


「そっか…」


付き合った事がある俺だけが言える応えだった。


「そっか…うん、分かった。ねぇ」


「ん?」


「私、彼氏ができそうなんだ」


「は?」


「紹介貰って何回か会って、最近告白されたんだ」


「……」


「さっき言ってくれた、恥ずかしがり屋な私をちゃんと理解してくれる人なの」


「そう…なんだ」



突然の彼女の告白に唇が震えた。

この2年、連絡しない時期もあった。

けれどお互い相手ができる事もなかった。

でも欲しいと欲がなかった自分に対し、彼女はいつも欲しいと嘆いていた。


嘆く割には恋人はできず、また嘆く彼女を見て笑っていた。

そんな彼女に彼氏ができる。

ここはおめでとうと言わないといけないのに


「だから今日で会うのやめよう」


「…そうだな」


返事しかできなかった。


彼女を家へ送る際、一歩前を歩く彼女を見つめる。

あぁ…こいつってこんなに可愛かったんだ。


「なぁ」


「ん?」


「別れたら報告待ってるから」


「付き合う前からそんなこと言わないでよ」



時間はたくさんあった。

彼女もきっと少しは俺に気持ちもあったはずだ。


いつか彼女とまた付き合って今度は結婚するのではないかと思う事もあった。


でも今はそのタイミングじゃないと思っていた。

今はこの曖昧な関係で…そう思っていた。


そう思っていた時だったんだ…。



いつもより短く感じた帰り道、彼女の家に着いて足が止まる。


「送ってくれてありがとう」


いつものお礼の言葉。


その言葉に笑ってじゃあなと帰るいつもの風景。

けど、今日は最後だから。



「なぁ」


「…今度は何?」


少し悪あがきをする。


「…連絡待ってるから」


失って気づく。


彼女の良い所が溢れ出てきて、彼女を欲しいと欲が出る。


しかし、彼女は他の男の元へ行く。


気づくのが遅かった自分が情けない。


彼女の返事は曖昧な笑顔だった。

そしてじゃあねと言って家に入って行った。



きっと彼女からもう連絡が来る事もないだろう。


そう確信しながら、ゆっくりと家路に向かった。



【友達以上恋人未満】


< 14 / 38 >

この作品をシェア

pagetop