bajo la luz de la luna

―el juego peligroso

 席に着くと、みんなが目で“お帰り”を示す。アタシは『ただいま』と返すと、チラリと店内を見回した。

 さっきより客が増えている。だがそれはどうだって良いことで、今アタシが気になっているのは、こっちをジロジロ見ている二人組の男。部下達もそれに気付いたのか、体勢を低くしてアタシに顔を寄せてきた。



『ボス、あいつらボスを狙ってるぜ。命知らずな……』



 英語話者のグレイがスペイン語で呟く。あまり大きな声で言えない話題のために、小声だ。目で相槌を打つと、隣に座っていたガルシアと目の前のソニアが“違う”と首を振る。



『二人共、何が違うの?』

『狙っているのは“命”じゃないわよ、ボス。グレイの説明が下手くそだわ。』

『……益々意味が分からないんだけど。ガルシア、どういうこと?』



 アタシに目を向けられて、ガルシアは面倒臭そうな顔をした。夕飯抜きにしてやろうかしら。



『頭脳明晰なお嬢様がお気付きでないとは意外でした。まぁ、しいて申し上げるなら、狙っているのは“体”、ですかね。』



 ――小舅の言葉でグレイとソニアが固まる。アタシは体中の血液が頭に集中する様をはっきりと感じた。
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