bajo la luz de la luna
 幼い頃に使っていた、燃えるような緋色をしたガラス細工の花をあしらった髪留めが目に入る。リラの瞳のエメラルドと反発してしまわないだろうかという僅かな不安も抱えながら、アタシは二人のブロンドの少女へ向き直る。



『良い物をあげるから、元気を出して。』



 それぞれの手に渡る、小さなエッフェル塔と髪留め。その瞬間、アイスブルーとエメラルドがキラリと瞬いた。



『わぁー!可愛いっ!!未来、パリに行ってきたの!?』

『こんな素敵な髪留め、もらっても良いんですか!?』



 手を取り合ってキャッキャとはしゃぐ二人。あと四、五年もすれば成人だというのに、とてもそうは見えない。でも、これが“普通”の反応なのだろう。それとはかけ離れた世界を知っている、アタシと違って。



『置物はパパとママが送ってくれたのよ。今旅行中なんでしょう?それから、その髪留めはアタシが昔使っていたものなの。イリスだけに何かあげるのは不公平だし、良かったら使って?』

『未来、ありがとう!』

『未来さん、ありがとうございます!大切にしますね。』
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