bajo la luz de la luna
 ――群がイタリアへ発ってから、みんなで静かに夕食を取った。いつも賑やかな雰囲気を作っていたあの子の姿は、もうここにはない。アタシの隣の空席が、彼女という存在の大きさを改めて実感させる。



『……パパ達、まだ帰らないのかしら?』

『そうですねぇ……旦那様からは、近々帰るというご連絡があったのですけれど。とにかく、お嬢様へ体に気を付けるように伝えてくれとのことでした。近頃は更に冷え込みますからね。』

『本当よねぇ……早く春が来れば良いのに!』



 メイド達の中には、『こんなことを言うのは大変失礼ですけれど、旦那様と奥様は少々無神経ですわ。こんな時にお嬢様のお側にいらっしゃらないなんて……』と言ってくれた子も居た。アタシが、虹のような笑顔のあの子をどれだけ大切にしていたかを知っているからこその一言だ。例え無礼だったとしても、そんな気遣いが心を温かくさせてくれた。

 食事が終わり、それぞれ挨拶をして別れていく。妹のような存在が一つ消えてしまったのは悲しいが、沈んでばかりは居られない。

 決意を胸に、ベッドへ体を預ける。僅かな隙間からこぼれてくる月光に小さな希望を込めながら、アタシはそっと目を閉じた。
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