bajo la luz de la luna
「……そんなに俺と二人きりが嬉しいか?」

「自惚れないでくれるかしら。その笑顔は癪に障るわ。」

「おー怖い。ま、お前の癪に障ろうが何だろうが、最初から助手席に乗せるつもりだったけどな。
おい、お前らのボスは無事に送り届けるから安心しろよ。」



 日本語が分かる数人の部下に「お願いしまーす!」と言われている群が、やはり癪に障る。不愉快という訳ではないけど、気付けば主導権を握っているこの男に一種の感服の念を抱かずには居られないのだ。

 鮮やかに仕事をこなし、早三年になるという群。初めて会った半年前のことが懐かしい。その半年という期間は、アタシのボス歴ということになる。就任式、すなわちアタシの18の誕生日、群はアタシを見てこう言ったのだった。



“クロノスか……実物見て納得したぜ。仕事、一緒に出来ると良いけどな。”



 差し出された手。あの時の温もりも交わした言葉も、まだはっきりと思い出せる。一目彼を見て、アタシは“強い”と感じたのだ。そう思わせるオーラを、群は纏っていた。後から聞いた話だと、あれは彼なりの誉め言葉だったらしい。群に時を司る“クロノス”の説明をされてから、初めて知ったのだけど。
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