bajo la luz de la luna
「未来の親父さんって話しやすいよな。もっと厳めしい人かと思ってたから驚いたぜ。あと、お酌のし甲斐があるな。」

「それはパパが酒豪なだけよ。アタシは群がお酌をすることに驚いたわ。」

「テメェは俺にどんなイメージを植え付けたいんだ?」



 このやり取りをお互いの関係者が聞いたら、まず間違いなくヒヤヒヤするだろう。マフィアのボス同士の睨み合いや口論は恐ろしくて仕方ないものらしく、双方のファミリーの仲が悪ければ、ただすれ違うだけでも冷や汗をかくようだ。

 一方、当の本人達はそんなことを知る由もないだろう。現にアタシや群がそうだ。すれ違う敵にいちいち怯えていては、一つのファミリーどころか一国の治安までも危ぶまれる。“ボスは気高く堂々と”の言葉を、いつも忘れてはいけないのだ。



「群は……てっきり愛人にお酌をしてもらうだけで、他人にはつがないのだと思っていたわ。」

「勝手な想像をしてくれたようだな。」

「ええ。まさか愛人を作らない主義だとはね……珍しいと言われなかった?」

「そりゃあ言われたさ。だから『俺は一人しか愛せない』って説明してやったよ。」



 この考えがまた、マフィアらしくないと思った。
< 43 / 268 >

この作品をシェア

pagetop