bajo la luz de la luna
「群、馬鹿にされているのはアナタではないわ。」

「そんなことは分かってる。未来を侮るとは、とんだ馬鹿者が居るんだな。襲撃の件が本当だったら笑えるぜ。」

「……目が全く笑ってないわよ?アタシは気にしてないから、アナタも気にしないで。」



 頭にきていないと言えば偽りになる。だけど、冷めた感情を抱いているのも事実だ。正体も明かさずにコソコソと戦いの火蓋を切ろうとする連中が本当に居るなら、そんな奴らはいわゆる“チキン”だ。

 自信がある者は正々堂々と真っ向からやってくる。こちらを油断させるためにあえてそのような方法を取っている可能性もなくはないけれど、アタシはそんな連中を好かない。ローサのボスは代々“遠慮がない”と言われているが、その通りなのだろう。アタシも父も、意見は明瞭に告げるタイプだから。思いやりは、忘れていないつもりだけど。



「お前がそう言うなら、我慢してやるか……」



 群は諦めたように言ったが、口調が幾分穏やかになっていた。どうやら憤りも鎮まったらしい。屋敷の門前に到着し、アタシを降ろすために群が車を止める。ドアを開けようと伸ばしかけた手を、黒いスーツから覗く手にスルリと掴まれた。
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