bajo la luz de la luna
 一陣の風が吹けば、くるりと背を向ける白スーツ。砂埃が舞うスペインの大地を颯爽と歩いて行った。

 誰かの呟きがする。エル・トラヘ・ブランコ・アトラエール・テンペスタッド――嵐を呼ぶ白スーツという訳か、と。



「……未来、大丈夫だ。お前もお前のお袋さんも俺も、汚れた人間なんかじゃねぇよ。
俺達は“今”を生きてるから、過去は変えられねぇ。だったら“これから”を変えようぜ?」



 優しい声色の日本語が、鼓膜を伝って体全体を包み込んでくれる。アタシを覆う腕の温もりが、増したように感じた。

 見渡せば、群の言葉そのものは分からずとも、表情から意味を解して一様に頷く部下達。その温かさが、アタシを奮い立たせてくれる。



『……大丈夫。アタシは自分に誇りを持ってるわ。ローサのボスとしても、一人の人間としてもね。』

『そうか……なら、俺達が無駄な心配する必要はねぇってことだな。
おい、とりあえず上がらせてもらうぞ。未来のご両親に挨拶したいからな。』



 群が呟けば、部下達が一斉にお辞儀する。アタシの最側近であるガルシア、ソニアとグレイはやや控えめに頭を下げ、アタシ達二人のために道を開けた。
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