bajo la luz de la luna

―cabeza de ROSA anterior

「Entrad.(入りなさい。)」



 低く威厳のあるこの声は紛れもなくアタシの父――前ローサファミリーボスの声だ。彼の厳しさと強さを表したような重低音に、アタシと群の背筋がピンとなった。二人分の『失礼します』という声が重なる。ドアノブを回し、前方に強く押す。入室するアタシ達を見送るように、マヌエルが深々と一礼した。

 扉の閉鎖音がして足音が去る。目の前のその人に、アタシと群は立て膝をついて敬意を示した。



『……まぁ、そう固くなるな。群、よく来てくれたな。』

『ご無沙汰してすみません。任務が立て込んでおりまして、お二人になかなか挨拶出来ず、愛しい未来にも会えずじまいでした。』

『ハハハ!そうかそうか。いや、活躍は聞いていたんだがな。先月は麻薬の密輸組織を捕らえたそうじゃないか。』

『お耳に入れて頂き光栄です、フェルナンドさん。』



 フェルナンド・エストレジャ。それがアタシの父の名だ。正式な婚約者でありながら、群は彼を絶対に“お義父さん”と呼ばない。意外な所で律儀というか、何というか。まぁ、それが気に入られる要因でもあったらしいのだけど。その証拠に、父は群を息子同然に扱っているのだ。
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