bajo la luz de la luna
「髪を結うと随分印象が違うな。コートの下は後のお楽しみっつーことで、とりあえず急ごうぜ。」

「……ええ。ガルシアがジェット機を出してくれるから、アナタも乗って。」

「あぁ、悪いな。」



 からかうような瞳で艶笑した群が、当たり前のように左手を差し出す。その手を右で握り、背後のドア奥へ『行ってくるわ』と声をかける。『行ってらっしゃ~い!』という弾んだスペイン語が、アタシ達を見送ってくれた。

 外に出れば、枯れ葉を揺らす秋風が頬を撫でてくる。部下の一部、グレイとソニアが座る前方に腰を下ろし、ガルシアの運転で、アタシ達はメキシコへと飛んだ。

 ――暫しのフライトが終わり、ジェット機はクレオファミリーの敷地内にある着陸帯へ、その体を横たえた。衝撃がほとんどなかったので、群がえらく感心している。『お前凄いな。ウチの運転手に欲しいくらいだぜ』とは、少し過大評価しすぎな気もするけれど。

 ガルシアは『どうも』と素っ気ない礼を返す。『相変わらずだな』と苦笑し、群はアタシの手を取って地面に降り立った。彼に続き、アタシも一歩一歩と足を進める。すると、アタシ達の前に見知った人物が姿を現した。
< 78 / 268 >

この作品をシェア

pagetop