bajo la luz de la luna
 必死な声色から、彼やアンヘラが精神的に追い詰められていることが窺える。彼女は人気歌手だから、アタシ達ローサのベストメンバーだけでは足りないかもしれない。予備の人間を足そうかしら……そう思いながら帳面をめくったが、生憎今はみんな手が塞がっている状態だ。

 こうなれば、同盟ファミリーの手を借りるしかない。ウチの頭脳だけだと今回は不安だし、“あの男”に頼ってみるか……



『依頼は受けられるけれど、少しだけ、切らないで待って頂ける?』

『ええ、構いません……』



 ほんの僅かだが落ち着きを取り戻したアロンソ氏に断りを得てから保留ボタンを押し、受話器を置いて、スーツのポケットから黒の携帯を取り出す。巷の女の子のように可愛らしいストラップは付けられないけれど、スタイリッシュで使いやすいのでなかなか気に入っている一品だ。

 ワンタッチで電話をかければ、すぐに応答があった。あら、暇なのかしら。大きな仕事が片付いたばかりだったら申し訳ないけど、困った時は“彼”に頼るに限る。手伝ってくれることを祈り、低く穏やかなその声に耳を澄ませた。
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