魔法使い、拾います!
「それと、もう一ついいかしらお父様。リュイさんを家に帰してあげて。もういいでしょう?」

「……。分かった。」

ジョナはその威厳ある顔に少し影を落としてティアの言葉を聞き入れた。感情的に魔法を使い、あろうことか愛する我が子を傷付けてしまったのだ。この事はジョナにとって、とても重いことであった。

「すまなかったね、お嬢さん。」

ジョナはリュイに杖を向ける。

「あの……!ちょっとだけ待って下さい!」

リュイは咄嗟に叫んだ。これで本当にお別れかと思うと目頭がジワリと熱くなる。リュイは自分に出来る精一杯の笑顔をヴァルに向けた。

最後に一目だけでもヴァルに会えたことを感謝しなくてはならないのに、ティアに寄り添うヴァルを見て苦しくなった。ヴァルとの楽しかった会話でさえ、ティアの存在を思えばそれは一瞬にして痛みに変わってしまう。ヴァルの幸せを願っていたはずなのに、段々と涙が溢れてヴァルの顔が良く見えない。

「ヴァル……ティアさんに会えて良かったね。それじゃ、さよなら。」

リュイの頭の中はぐちゃぐちゃだった。一刻も早くここから逃げ出したい。

「主……僕は……。」

「私を家に帰してください。」

ヴァルの言葉を遮るようにリュイはジョナにきりりと言った。リュイに促されたジョナは、再びリュイに杖を向け『移動』と唱えた。杖から放たれた七色の光と共に部屋の中からリュイの姿が消える。

ヴァルは単なる空間になったその場所を、ただ見つめるしかなかった。
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