魔法使い、拾います！

リュイが強く思い浮かべていたのは住み慣れた我が家であった。夕日と共にその見慣れた景色が目の前に現れて、リュイは一気に脱力した。雑貨屋の入り口の前で地面にすとんと崩れ落ちてしまったのだ。

家に帰れた安心感なのか、ヴァルにさよならを言った苦しさなのか……。急に目頭が熱くなり、自然と涙が溢れてきた。拭っても、拭っても、こぼれる涙が止まってくれない。嗚咽する声も大きくなってきて、仕舞には自分でコントロールが効かなくなった。

「……誰かいるのか？」

ゆっくりとドアが開いてグレンが顔を覗かせた。

「リュイ！帰って来れたのか！どうした、何があった？と…とにかく中へ入れ！」

グレンは泣きじゃくるリュイを立たせて二階のリビングへと連れて行った。リュイをソファーに座らせ、自分も隣に腰掛ける。

「大丈夫か？酷いことされていないか？」

一生懸命手で涙を拭うリュイに精一杯の声をかけてみる。大事なリュイが泣いているのに、気の利いたセリフ一つ言えない自分がもどかしい。

グレンはそっとリュイの頭を自分の胸にもたれ掛けさせた。

「いいよ。いっぱい泣いとけ。」

優しくリュイの髪を撫でてはみたが、こんなことしかしてやれない自分の無力さが悔しくて、グレンはきゅっと唇を噛んだ。