ハルとオオカミ


と、不純な思考をぐるぐると巡らせていたら、ぶるりと身体が震えた。「くしゅん」とくしゃみが出る。五十嵐くんが私を見て目を細めた。


「……寒い?」

「あ、うん……ちょっとだけ。でも大丈夫だよ」

「……俺の家近いし、シャワー浴びて帰る?」


えっ。

五十嵐くんの……おうち?


驚いてぽかんと彼を見上げると、五十嵐くんはハッとした表情で顔を背けた。


「……あー、悪い。なんでもない。忘れて」

「あ、いや、えっと……」


こんな唐突に推しのお家にお邪魔するとか聞いてない。心の準備が出来てない。



「……はるは、違うよな。気軽に男の家でシャワー浴びたりしねえか」



何気ない五十嵐くんのその言葉に、急に頭が冷えた。


……『違う』って、もしかしてさっきのナナミちゃんと比べてる?


他の五十嵐くんのお友達の女の子たちは、気軽に五十嵐くんのお家に行ってるってことなのかな。



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