ハルとオオカミ

ーー『あたし、この前五十嵐が浦波の女の子と一緒にいるの見た』

ーー『でも彼女じゃないらしいよ? しかも、毎回連れてる女の子違うって』


いつかに聞いた女子の言葉を思い出した。邪な考えが頭をよぎる。

……女遊びが激しいっていう噂が事実になって、いきなり目の前に突き付けられたみたいな感覚だ。


さっきのナナミちゃんの胸元が彼の腕に押し付けられる光景を思い出して、なんだか気持ちがすごくモヤモヤしてきた。


「……い、行きたいです」

「え?」

「五十嵐くんのお家、行きたいです。しゃ、シャワーを、お借りしたいです!」


思い切って拳を握りしめて言うと、五十嵐くんは面食らった顔をした。そして意外そうな目で私を見る。


「……なんか無理してねえ?」

「してないです!」


なんで敬語……とつぶやきながら、五十嵐くんは雨の降りしきる様子を見て、ため息をついた。


「ま、はるがそれでいいならいいよ。はるの家、こっからだと結構時間かかるし。帰ってる間に風邪ひきそうだしな……」


そう言うと、五十嵐くんは私の手を引いて再び走り出した。







ここから近いと言っていた通り、五十嵐くん家の部屋があるマンションは走って二分もかからない場所にあった。




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