ハルとオオカミ


「お、お邪魔します……」

「足拭くもの持ってくるから、ちょっと待ってて」


室内は静かだ。五十嵐くんは先に靴と靴下を脱いで部屋にあがると、私にタオルを持ってきてくれた。


「ありがとう」


床に水が落ちないようタオルで拭くと、五十嵐くんに浴室まで案内してもらった。

家の中に人の気配がないので、廊下を歩きながら思わずきょろきょろしていると、五十嵐くんが「あ、言ってなかったけど」と思い出したように言った。


「今、親いないから」


……マジすか。


ちょっと予想はしていた。色んな女の子が気軽に家に来れる環境ってことは、昼間はお仕事とかでご両親が家にいないのかもしれない。

覚悟はしていたけど思わず立ち止まって固まってしまった私に、五十嵐くんは驚いた顔をした。


そしてふっと笑うと、私の頭をぽんと撫でる。優しい目が私を見下ろしていた。

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