王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「今までずっと、あの人は、一時ではない揺るがない愛情を求めてるのかなぁと思ってたんですけど……それこそ母性みたいなそういうものを。
でも、それ以上に愛したかったみたいですね。矛先見つけて、ちょっとうっとうしいくらいに生き生きしてますから」
「クレアに会うまでは違ったってことか?」

ガイルが不思議そうに聞くと、ジュリアさんが苦笑いを浮かべる。

「そうですね。日々をもっと淡々と過ごしていました。感情の起伏が少なかったとでも言うんでしょうか。常に笑顔は浮かべてましたけど、どこかつまらなそうでしたし」
「ああ、そういやそうだったかもなぁ。酒屋で飲んだとき、結構グチグチ言ってたの覚えてる」

納得したように言いカップに口を付けたガイルが、私を見てニッと口の端を上げた。

「だから言ったろ。ああいうヤツはおまえに惹かれるんだって」

まるで、どうだ!とでも言いたそうな笑顔に、塔での会話を思い出す。
ガイルが、酒場でシオンさんに会ったときの話を。

『そいつが言ってた。この世界に本物の愛情なんてないんだって。みんな結局自分が一番大事なのに、口先だけで〝愛〟だのなんだの言われて嫌気が差すって。今まで見た目や地位目当てに近づいてきたヤツは相当だったんだろうな。本当に嫌そうだったから』

『いや。おまえは、そういうヤツに好かれそうだと思ってさ。こんな場所で育ったから世間の汚れを知らねーし、なにより気持ちが真っ直ぐだから』

たしかに言われたかもしれない……と口を尖らせると、楽しそうに笑われた。

自信満々の顔に腹が立つ。


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