王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「おまえは本でしか知らないから受け入れにくいかもしれないけど、そういうもんは理屈じゃねーんだよ。特に男の場合は本能に近い」

「恋愛のひとつもしたことない人がよく言う……」
「俺の恋人は剣だからな」
「大事な恋人をずいぶん簡単に取り上げられちゃって可哀想に」

ガイルがぐぐっと黙ったところでスッキリして笑う。

それから、ジュリアさんに視線を移した。
さっきからどうしても気になっている事があったから。

「あの、ジュリアさんはどうしてシオンさんのことをそんなに知ってるんですか?」

同じ王宮で暮らしていれば、性格なんかは自然とわかってくるかもしれない。
でも、それにしたって詳しすぎる。

シオンさんが誰にでも同じ笑顔で接しているっていうのが本当なら、ジュリアさんはなんでそれに気付いたんだろう。

シオンさんが、ジュリアさんには〝他大勢〟に向けるものとは違う表情を見せたからだろうか。
素直な感情を見せたから……?

そんな風に思い答えを待っていると、ジュリアさんはキョトンとした顔をしたあと、ニッと口の端を上げる。

「まぁ、長い付き合いですので。でも、クレア様が気にするような関係ではありませんので、お気になさらず」
「別に気にしたわけでは……」

やきもちだと思われてしまったのがわかって訂正しようとする私を、ガイルが止める。

「クレア」と小声で呼ばれ視線を移すと、ガイルがテーブルの上になにかメモみたいなものをスッと差し出したところだった。


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