王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「いや、クレアにするような態度で他のヤツらに接したりはしないよ。ちゃんと団長と団員っていう関係のなかで面倒見てるし。じゃないと気持ち悪い」

くっくと喉の奥で笑われ、それもそうかと納得する。

この人と会う時は、こうしてふたりきりかジュリアさんがいるかくらいだから、私以外の人にどう接しているのかが未だにわからないけど……。

そうか、でも団長さんなんだよなぁ……と未だ笑みをうかべる横顔を眺める。

シオンさんは、団員にどういう態度をとるんだろう。どんな言葉をかけるんだろう。剣を握ったとき、どう表情を変えどう動くんだろう。

次々に興味が溢れる。

それが、知らないことを知りたいと思うただの探究心とは違う気がして……自分自身、わけがわからずなんだろうと首を傾げたくなったとき。

外がなんだか騒がしくなった。

いつかの……テネーブル王国の王宮が攻め入られたときに似た大勢の声に、一歩たじろぐ。

あの時ほど大きな声ではないし、距離だってあるのに……なんとなく嫌な予感がして胸がざわざわした。

「なんだろ」

私の動揺を感じ取ったのか、シオンさんが私の肩を抱き寄せながら言う。

落ち着かせるように優しく肩を撫でてくれてはいるけれど……その横顔には、いつもはない種類の真剣さがあった。

あの時……テネーブル王国が攻め入られたとき、様子を見てくるって言ったガイルが背中に浮かべていたものと同じ種類の――。

雲は厚くまとまり、ピュッと強い風が地面を這う。

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