久遠の絆
「どういうことか、説明していただけませんか?」


「この子がどうして生きているかをかい?」


逆に問われ、カイルは浅く頷いた。


ふっと微笑んだナイルターシャは、

「その前に、この香を焚いてやろう」

と言って、香炉を蘭の枕元に置いた。


「これは古くから伝わる、きつけの香だよ」


ゆらゆらと一条の煙が香炉から立ち上ると、甘く芳しい香りがした。


「もしや、と思いますが」


「……」


「非合法の香をセクンに与えましたか?」


立ち上る煙を眺めていたナイルターシャは、ゆっくりカイルの方に向き直った。


「非合法かどうかは知らないがね。
緊張を緩和させる香を使ったほうがいいと言ったことはある」


(やはり……)


それを非合法と理解しながら、セクンは蘭の更衣室でその香を使ったのだ。


それも量を増した状態で。


(ますます狸だな、あの大司祭は)


「そろそろ目を覚ますよ」


はっとして見ると、瞼がぴくぴく動いている。


思わず近寄り、「蘭さま」と声を掛けた。


その声に誘われるように瞼が開く。


一瞬眩しげに目を閉じたが、次には完全に覚醒したようだ。


それでも意識ははっきりしないのか、ぼんやり天井を見上げている。


「蘭……さま?」


もう一度そっと呼びかけてみた。


ゆっくり視線が動き、カイルの顔で止まった。


「カイ……ル……?」
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