久遠の絆
部屋の中ほどの黒い床に、丸い光がある。


窓から差し込んだ陽光だった。


蘭は身を震わせながら、それをじっと見ていた。


そしておもむろに、その光の中に右手を差し出したのだ。


薬指がきらりと光った。


(瑠璃の石……)


この石に力を与えたい。


そう思いながら、蘭は光に手を伸ばし続けた。


(こうしていれば悪いものが寄って来ないかもしれない)


そんなことが本当にあるのかは分からない。


けれどそうでもしなければ、自分はこの圧し掛かる不安に押しつぶされてしまいそうなのだ。


今彼女を支えているのは、自分が救い手であるという漠然とした事実だけなのだから……。








光に当たっていると気分が落ち着いてきたのか。


体の震えが止まり、恐怖も和らいだらしい。


小さく息をつくと蘭は手を戻し、顔の前に翳した。


それから、そっと石に触れた。


さわさわと撫でてみる。


するとこの石が、何故だかとても愛しいものに思えてきた。


この石をずっと以前から知っているような、そんな気持ちにさえなってくる。


(お前はわたしで、いいの?)


わたしみたいな不完全な人間が救い手で良かった?


石がその答えを言ってくれたなら、自分は今どれだけ気持ちが軽くなったか知れない。


けれど、それは物言わぬ石だった。


答えは自ら探し出さなくてはならないのだ。
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