久遠の絆
「にいさまが仰るように、帝国は滅びるかもしれない。でもその時はその時でしょう。わたしが恋をすることかどうかも分かんないし。ずっと先のことを今考えたって仕方ないわ。

わたしはカイルと婚約することは嫌じゃない。婚約して、もしかしたら本当に彼のことを好きになるかもしれない。

でもそれも分からないものね。誰も未来なんて分からないのよ、にいさま。だから考え過ぎてどうしようもなくなるよりは、分からない未来のことなんて真剣に考えなくていいのよ。

それに、カイルを解放してやるなんて言ったら途方に暮れちゃうわよ、きっと。あの人は帝国を守るっていう考えでいるんだもの。それをにいさまが気に病む必要なんてないと思うわ。

帝国が滅ぶ時がくれば、またその時考えればいいのよ。ね、にいさま」


幼いと思っていた妹に励まされるなど。


ジュラークⅠ世は自嘲の笑みを漏らした。


「そうだな。少し考え過ぎているのかもしれないな」


「そうよ。考え過ぎ」


「その時はその時、か」


「そう、なるようにしかならないもの」


「ふふふ、お前と話していると緊張感がなくなるな」


「まあ、にいさまったら」


ぷーと顔を膨らませる妹を、ようやく穏やかな表情で見返したジュラークⅠ世は、それでもカイルが妹の夫君になってくれたらと思わないではいられなかった。


大切な妹を、もっとも信頼できる親友に。


すべての理屈を取り除いて残るのは、単純な、兄としての思いだけ。


けれどそれほどに強い思いを持ってしても、やはり未来にはどうなっているか知ることは出来ない。


今はただ、前線に赴いた人の無事を祈ることしか出来なかった。




















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