久遠の絆
それが長身の彼には良く合っていて、蘭は見惚れた。


(なんて、綺麗な人なんだろう)


そんな人にこんなに丁寧に接して貰って。


(わたしにはそんな価値ないのに……)


ギュッと目をつぶった。



(わたしは、価値のない汚れた人間なんだから!)



涙が溢れそうになる。


ずっと泣くことを我慢していた。


ここ何年も泣いていない。


泣けば負けだと思っていたから。


でも、こんな風に人の優しさを受けてしまうと、目頭が熱くなる。


布団の端をつまんで、じっと泣くのを堪えていた。


目尻からひと粒涙が零れ落ちた時、自動ドアの開く音がした。


耳だけが状況を把握している。


カチャカチャとテーブルの上に皿が並べられる音。


カイルと何か言葉を交わす声。


心なしいい匂いも漂ってくる。



(おなか空いた……)







わたし、死のうとしてたのにっ!


死ぬために家を飛び出したのにっ!!


わたしの体は、こんなにも“生”を求めている


心はこんなにも絶望でいっぱいだというのに


わたしの体は生きようともがいているーーー








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