久遠の絆
「蘭さま、起きておいでですか?」


カイルの優しい声がした。


そっと瞼を開けると、カイルはほっとしたような顔をして、


「まだご自分で召し上がることは無理でしょうから、私が介添えいたしましょう」

とスプーンを手にした。


「ええ、だめですよ!カイルさんに食べさせてもらうなんて、そんな。わたし、自分でできますから!」


言って、急いで起き上がろうと力を入れた。


「う”っ」


痛みが走って、思わず呻いた。


(こんな素敵な人の前で、わたし『う”っ』て言った!)


恥ずかしさで顔が赤くなるのがわかる。


けれど彼は、聞いていなかったわけではないだろうに、至って穏やかに沈着としていた。


「やはり無理なようですね。まずは軽いものからのほうが良いでしょうから、オート
ミールを差し上げましょうね」


そう言って、もう深皿を手にしている。


「お、お願いします……」


こうなっては蘭も観念するしかなかった。






超絶美形青年が、女子高生にオートミールを食べさせるの図。





その絵は、非常に奇妙だと言わざるを得ないだろう。


「どうして、カイルさんはわたしにこんなに優しくしてくれるんですか?それに、蘭さまって呼ぶし。そもそもどうしてわたしの名前……」


彼の瞳がまた悲しげに揺らいだ。


蘭は次の言葉を言えなくなってしまった。


その揺らぎを見ると、蘭はなぜだかとても切なくなるのだ。



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