久遠の絆
「頭の中で整理してきたつもりだったのですが、いざとなると何からお話しするべきか」


「カイルさんは、どこの国の人なんですか?」


その質問に、カイルは少し苦笑した。


今度は蘭が小首を傾げる番だった。


(どういった意味の苦笑なんだろう)


カイルは何か思案しているようだった。


それでも、手は淀みなくオートミールを蘭の口に運んでいる。


そしてしばらくして意を決したように口を開いたのだ。


悲しげに揺らいでいた瞳には、力強い光が灯っていた。


「私は当然、蘭さまのお国の者ではありません」


「そうでしょうね」


「……私は蘭さまのおられる世界、つまりこの地球を含む“宇宙というひとつの世界”とは違う“別の世界”から来たのです」




「?????」




蘭の目はまさに今、点になっている。


カイルはそんな蘭の様子を一瞥すると、サイドテーブルに深皿を置いて立ち上がり、べッドの反対側に歩いて行った。


それを目で追っていくと、無機質な金属ばかりと思っていた壁に、丸い模様があることに気付く。


(飛行機の窓みたい)


そう思ったら、カイルは取っ手のようなものを摘まんで、するすると上に引き上げた。


それは、本当に窓だったのだ。


サイズは旅客機のものに比べると大きいが、形状はまったく同じ。


「我々は、次元と次元の間を飛行できる船に乗っているのですよ」


カイルはあくまで淡々と告げた。


< 24 / 810 >

この作品をシェア

pagetop