久遠の絆
珍しく激昂するマト。


そんな彼を宥めるようにシャルティが肩を抱いた。


「シド・フォーンが君の村を襲ったって?いつ?」


「先の戦争です。ジャングルの俺の村をいきなり襲撃して、大切なものを奪って行った」


「待て。お前は砂漠の民ではないのか?」


意外そうにするシドに、マトはまた険しい眼を向ける。


「俺は、あんたがボロボロにした村の人間だ。ばばさまどころか、ランまで攫ったじゃないか!」


その名に心臓が激しく波打った。


『蘭』という名に。


「貴様。蘭を知っているのか?」


「ランはもうシャルティさんたちの庇護下にあるよ。奪い返せやしないさ」


「そうか……蘭はここにいるんだな……」


「よければ、案内するが?」


「シャルティさん?!ダメですよ。彼はシド・フォーンなんですよ!」


「知ってる。だが今は漆黒の総帥ではない。何の力も持たない一般人だ。蘭に会わせても、支障はないと思うがね。同盟側の内部を知ることが出来れば、我々としても助かるんだ。あなたはすべてを知っているんだろう?知っていて、蘭を探しているのだろう?」


「ああ、知っている。だから、蘭を守りたい」


「蘭を守るのは俺だ!」


「貴様のようなひよっこに何が出来る」


「なっ!」


せせら笑うシドに、マトは反論出来なかった。


確かにシドやシャルティに比べれば、自分は未熟だという自覚があるのだ。


「念のため、その銃は預かりたいが、いいかね?」


「ああ」


シドは砂の上に短銃を放った。


シャルティはゆっくりとした動作でそれを拾うと、「案内しよう。付いて来てくれ」と言いながら踵を返した。


マトはまだ腑に落ちない様子だったが、組織の長であるシャルティが決めたことには従うしかなかった。


先を行くシドの広い背中を睨みつけるしか出来なかった。

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