久遠の絆
◇◇◇





シドだ。


シドだ。


シドだ!




蘭の体から力が抜けた。


その人が身に纏うものは漆黒であるけれど、その身より発せられるものは、晴れやかで温かい。


冷酷であるという顔は、本当は彼の一面でしかないということを蘭は知っている。


そんな蘭のみならず、アトゥマの食堂にシドが現れた時、その場にいた者のほとんどが、春の日溜まりのような、光に満ちた暖かな風を感じたに違いない。


それが、彼のカリスマ性の本質というべきものだった。


蘭の胸に熱いものが込み上げた。


変わらず、元気そうなシド。


少し痩せたようだが、日々鍛練している彼には、さして問題ではないだろう。


「蘭。ちょっといいか?」


シャルティの呼び掛けに、蘭は力の入らない足を叱咤して、ようやく立ち上がった。


「シャルティさん、その人は……?」


半信半疑なのか、部下の一人からそんな質問が飛ぶ。


シャルティは動揺を与えない為か、いつもの穏やかな微笑を絶やすことはなかった。


「珍しい客人だ。皆にもあとから紹介するから、ここで待っててくれ」


「だ、大丈夫なんですか?」


「ああ。蘭の知己だしな」


皆の視線が蘭に集まる。


蘭は顔が赤くなるのを感じながら、やっとの思いでシャルティの前に立った。


「じゃあ、イーファンの部屋へ」


イーファンの居室までは僅かな距離だというのに、蘭にはとても長く感じられたた。


前を行くシドの背中ばかり見ていた。


マトも付いて来ているが、妹のマヤの姿はない。


蘭は振り返り、マトにそのことを問うた。


「ああ、その辺にいると思うんだけど。まだ意味もなく拗ねてるのかな」


「え。探しに行った方がいいんじゃ」


「あいつになんかあったら、俺すぐに分かるから。だから大丈夫だよ」


双子の妙というものか。


蘭はまた少し羨ましくなってしまうのだった。


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