久遠の絆
シドがイーファンの居室に足を踏み入れた瞬間、人影が体当たりしてきた。


咄嗟にシャルティがその手首を掴む。


「マヤ。今は引け」


それは、短刀をシドに向けるマヤだった。


蘭は手で口を覆ったまま固まってしまった。


そんな彼女を宥めるように、マトが肩に手を置いた。


「イーファン。何故止めなかった?」


「止める間がなかったのです。申し訳ありません」


「こいつが村を破壊したんだ!カタキだよ。やらせてよ!マトも蘭も酷いことされたのに、何で大人しく従ってるんだ?!」


マトの手にクッと力が入るのを蘭は感じた。


マトとて、今の状況を良しとしている訳ではないのだ。


けれど、マトはじっと耐えている。


「マヤ。引くんだ」


そして妹を諌めた。


「兄さん……」


「今は、ダメだ」


マヤはマトをしばし見つめた。


そして。


シャルティに掴まれた腕を振り解いた。


「マトがそう言うなら、待つよ」


それは、今は我慢するが、いずれは敵を討つという意思表示。


しかし、それで十分だった。


マヤが不機嫌も露わに壁際に移ってから、ようやく部屋の主であるイーファンがシドへと歩み寄った。


「ようこそ、アトゥマへ」


「アトゥマ……。聞いたことがあるな」


「言うなれば、反政府組織です、我々は。まだまだ弱小で、水面下での活動しかありませんのに、耳に入れて頂いていたようで嬉しいですね。ガルーダが崩壊した今、対象をどこに向けようかと模索中なのですよ」


「俺を公開処刑にでもするか?」


「以前のあなたでしたら、そうすることにも意味があったでしょう。ですが、今のあなたにその価値はありません。宜しければ、協力して頂きたいのですよ。あなたの知識と経験でもって」


「協力だと?この俺に?」


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