久遠の絆
「この子は一所懸命に、己の傷と向き合い、克服しようとしています。だが、それはあまりに辛い作業。時に心を閉ざしたくなっても仕方ないでしょう。あなたに出来ることは一つ。見守ってあげることです」


「本当に、それしかないか?」


「ありません」


きっぱりと言い切ったイーファンを、シドはまじまじと見た。


ややして、「なら、仕方ねえな」と呟いた。


「俺はもちろん蘭の傍にいるさ。そのためにここに来たんだ」


「はい」


「じゃあ、頼む」


そう言うと、シドは思いの外あっさりと部屋を出て行った。


それを見送ったイーファンは蘭が眠っていることを確認すると、窓辺に寄った。


その脇には棚があった。


そこには小さな扉が付いている。


イーファンはその扉に右手を翳した。


手の平からポワンと淡い光が零れ出る。


その光が扉に触れた途端、まるで機械仕掛けのように、扉が自然に開いた。


扉の中の小さな空間には、小さな木の箱がふたつ、並べて置いてあった。


「見極める時が近付いている」


イーファンはそう呟くと、窓越しに空を見上げた。


「あと少し……。セイア。私に力を」










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