久遠の絆
やがて頂上と思われる辺りに、建物らしき物が見え始めた。


かつては白かったであろう外観は、今は煤けたように黒ずんでいる。


年月がそうしたのか、もしくはこれもシェイルナータの仕業かも知れなかった。


(シェイルナータさま……)


今ははっきりと、彼女が敵対するものだのだと分かる。


だが、蘭は心のどこかでまだ望みを捨てきれないでいた。


それはあの時のシェイルナータの優しさが、まったくの偽物だとはどうしても思えないからだ。


(きっと、こちらが真摯に臨めば)


或いは彼女の心に響くこともあるかも知れないと思う。


(やってみよう)


神殿が近付くにつれ、蘭の中でそんな思いが強くなっていった。


ともすれば直ぐに諦めてしまいがちだった人間関係。


でも、もう、諦めたくない。


この世界に生きる人たちが大好きだから。


シェイルナータもそう。


(どんなに敵視されても、わたしはシェイルナータさまが好き)


山を登り切り、大きく息をつく。


「やっと、着いた~」


シドにはまったく疲労の色は見えなかったが、蘭はへとへとだった。


これからが本番だと言うのにだ。


神殿は大きかった。


ドーム型をした建物。


一見、天文台のように見える。


「みんな、まだかな」


見渡しても、それらしき人影はない。


イーファンはまだシェイルナータと戦っているのだろうか。


「蘭!」


呼ばれて振り向くと、マトとマヤが神殿の方から走って来るところだった。


「マト!無事だったんだ。怪我は?」


「これくらい平気だよ。ちょっと前に着いたんだ」


「そっか、良かった」


血の跡が痛々しいが、シドの言ったように普段から鍛えているのだろう。


大したことはなさそうだった。

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