久遠の絆
艶やかな黒髪は、この暗闇の中でも輝いて見えた。
そして紅を差したように赤い唇も、つやつやと瑞瑞しい。
彼女は生きていたのか。
一瞬、そう思ってしまう程生き生きとしていた。
「セイアさん、ここは?」
『ここは現し世と常世の狭間の世界。何もない所じゃ』
「うつしよととこよ?」
『分からぬか?人の生きる世と死してのち行くべき世との間、ということじゃ』
「はあ」
そう言えば、セイアは姫宮だったと思い出す。
死生感は昔の日本人のものなのだ。
だが、本当にそうなのか。
『わらわはそうであろうと思うている。行き先が定まらぬ。ずっとここに留まったまま。これは、自ら命を絶ったわらわへの罰じゃ』
「……」
だから、ここはこんなにも哀しいんだ。
セイアの哀しみでいっぱいなんだ。
蘭は泣きそうになるのを堪えながら言った。
「でも、セイアさんはとても綺麗だよ」
『綺麗?』
「うん。羨ましいくらい綺麗」
するとセイアは嘲るような笑みを浮かべた。
『それがどうしたというのだ?』
「え?」
『容姿の優劣に、如何程の価値があろう。わらわは、生あるそなたこそが羨ましい』
「!!」
『生きていれば、いくらでもやり直せたものを……。わらわは己の弱さが憎い』
「セイアさん……」
彼女は魂だけの存在になってからもずっと、気の遠くなるような時間を、後悔の中で過ごしてきたのだろうか。
この暗闇の中で。