100回の好きの行方
ー大切な同僚ーの行方 篤人side
 暑くもなく寒くもなく過ごしやすくなってきた秋。

 澄みきった青い空が頭上には広がるが、そんな青空を見上げる俺の心はモヤモヤし、ちっとも澄みきったものじゃなかった。

 理由はわかってる。

 自分がー同僚ーと線引きして、突き放し、受け入れなかったのに、同僚として近くにいない麻嘉のことが頭から離れなかった。

 今までは、手を伸ばせば捕まえられる位置に確かにいた。デスクも近いし、同じフロアだから目に映る範囲にいた。

 だが、部署も変われば仕事のスタイルが違い、すれ違うこともままならない。

 俺は、自分の目の届く範囲にいて、同じ物事を見たり聞いたりする同僚として、これからも麻嘉と過ごしたかったのだ。

 目の届く所にいない麻嘉が気になって仕方ない。

 自分が線引きした後、二人で行った海鮮丼の美味しい店では、今までで一番気まずい食事で、同僚として当たり障りのない仕事の話しかしなかった。

 "最近どう?"そんな社交辞令ばかりを並べ、正直何を話したか、海鮮丼が美味しかったか、それすら覚えてない。

 帰り着くなり尚志から、からかうような電話があったが、"抱いたが同僚でいたい"と話したと伝えると、すぐに飛んできた。

『結局お前も、誘惑に負けたただの男だったか。』

と、怒りもせず淡々と呟かれ、それ以上何も言わなかった。
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