100回の好きの行方
 屋上の隅で、暖かな陽射しの中、一人ベンチに座りながら、こっそりと弁当を開く篤斗の後ろから自分より先に、お弁当に手を出す人物がいた。

「あっこれ、まじうめー。」

「こら、お前、あとつけてきたな!」

 軽く睨みを聞かせるが、尚志本人は悪びれる様子もなく、隣に座り込む。

「こそこそ出ていくから、俺もこそこそと…。」

「あのなぁー。」

「見た目目、味も美味しい、これで、大好きとか書いてあれば、OKだったのに。俺的には!」

 呆れ顔になる篤斗に対し、ニコニコと笑いながら覗き込む尚志に背を向けながら食べたした篤斗が、口に入れた瞬間、"あっ美味しい。"とボソリと呟いたのを尚志は、聞き漏らさなかった。

「これは、麻嘉まじで落としにかかってるな……。」

 麻嘉のお弁当に舌鼓している篤斗には、尚志の言葉は聞こえていないようだった。


 お弁当を食べ終わり、麻嘉が食後のコーヒーを買いにカフェフロアに行くと、向こうから来る篤斗たちが目に入る。

 先に気が付いた篤斗が、いつものように軽く手を上げた。

 いつも、自分を見つけると遠く離れてても、気がつけば必ず軽く手を上げ挨拶してくれるのを、麻嘉は密かな楽しみにしていたのだ。

「篤斗!あっ尚志も……。」

 駆け寄りながらそんなこと言う麻嘉には、"俺はついでかよ?"と毒つく尚志のことは、もはや眼中にはないようであった。

「麻嘉、めちゃくちゃ弁当、美味しかった!サンキュウなっ!」

 篤斗に笑顔で言われ、麻嘉は胸がドキンと跳ね上がった。

 自分が勝手に押し付けたお弁当に、こんなに嬉しい感想を言ってくれるなんてと、思ったら、また、不意に言葉が出てしまった。

「篤斗、やっぱり大好き!」

 素直に伝える麻嘉の瞳は、篤斗をしっかりと捕らえていた。
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