吐息のかかる距離で愛をささやいて
会社についていつも通り仕事を始める。


新田さんが何か言いたそうにこっちを見ているのがわかるけど、自分からは声をかけない。



気づくたびに新田さんはこっちを見ているけど、気づかないふりをした。

こういう時は自分から声をかけて良かったためしがない。相手が声をかけてくるのを待つのがいい。



でも、あんまりこっちを見ているものだから、また何かミスをしてしまったのではないかと不安になった。



ちょっと考えたけど、新田さんに頼んだ仕事はない。ほかの人から頼まれた仕事ならその人を見るだろうし。



嫌われたかな・・・。



そんな考えが頭をよぎってちょっとへこんだ。




そんな考えを追い出す様に仕事に集中すると気づけばお昼の時間になっていた。


周りを見るともうほとんどの人がご飯に行って席を外している。




仕事に集中しているときに『お昼だよ』と声をかけられなくなったのはいつからだろう。



重たいため息をつきながら、休憩に入る準備をしていると後ろから声をかけられた。



「かーほー」


振り向けば、課の入り口に見慣れた二人が立っている。


「あなたまだ仕事してたの?返事がないから迎えに来てみれば!!」


そう言ったのは、秘書課の主任をしている早瀬涼子。



「まぁまぁ、いいじゃん。夏帆、行こう。」


そう言ってほほ笑んだのは営業課の課長の久瀬瑞穂。



数人残った人の視線を集めているのが恥ずかしかったが、さっきまでの憂鬱な気分は吹き飛んで、二人のところへ向かった。
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