神様修行はじめます! 其の五
「だめ――――!」


 あたしは子猫ちゃんの体に覆い被さり、身を丸くした。


 必死の覚悟で衝撃に備えていると、バラバラッと氷の破片が上から降り注いでくる。


 おそるおそる顔を上げると、凍雨くんが仲間に迫る脅威を次々と粉砕してくれていた。


 凍雨くんの表情は、見たこともないぐらい真剣そのもの。


 炎の玉はいつ、どこから、どれくらいのスピードで降ってくるのか、ぜんぜん予想がつかない。


 それをひとつ残らず100パーセント粉砕しなきゃならないんだから、瞬きする余裕もないだろう。


 打率10割ホームランだなんて、大リーガーでも不可能な記録を成功させなきゃならない凍雨くんは、仲間全員の命を両肩に背負って、まさに死ぬ気で精神集中していた。


「おい、凍雨」


 絹糸を救うべく、やっぱり精神集中して術を発動中のセバスチャンさんが凍雨くんに話しかける。


 九尾の骨の一本一本に巻き付いた蔓が、よく見ればブルブルと小刻みに震えていた。


 これは、かなり強烈な力で引っ張ってるんだ。ということは同じくらい強烈な威力で、絹糸の体に骨がメリ込もうとしている、ということだ。


 セバスチャンさんが一瞬でも気を抜いたら、骨は急所まで到達してしまうかも。


 そうなったら門川君はもうこれ以上の術の発動は不可能だから、絹糸の死に直結してしまう!


「見ての通り、俺は手が離せねえ。仲間全員の命はお前の腕にかかってるんだから、絶対に失敗すんじゃねえぞ。万が一、失敗したら……」


 セバスチャンさんの切れ長で美しい目から、ビームみたいにギラッとした光が、凍雨くんに向けて鋭く放たれた。


「俺がテメエを死ぬまでブチ殺すからな? きっちり腹くくれよ?」


 ぞおおぉぉ~~~……。


 背筋が凍るとは、まさにこのことか。第六天魔王の顔と声の凄みが、ハンパないことになってる。


 これ本気だ。嘘でも冗談でもなく、凍雨くんが失敗したら、このひと普通に凍雨くんのことタコ殴りくらいにはするよ。


 鬼畜で極道なセリフがこんなに似合うイケメンなんて見たことない。


 周囲の空気は炎のせいで熱いくらいなのに、背中にぶるるっと寒気が走ってしまう。


 凍雨くんの表情がますます青ざめ、半ベソ状態になった。
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