神様修行はじめます! 其の五
 ビリビリビリィィッと空間全体に、すーっごい振動が走った。


 中庭の植木や、小池の水の表面が、波動のせいで電動マッサージ器みたいにブルンブルン震えてるほどだ。


 ひー! ほんっとにすんごい威力! 耳を両手でがっちりホールドしてるのに、鼓膜がギンギン痺れて痛いよぅー!


 お岩さんの声の特定の周波数って、いろんな生き物に対して、特別な作用を生むらしい。


 でもこれ絶対、超音波兵器にもなるよ!


 上空に『ステルス戦闘機F22』とか飛んでても、簡単に撃ち落とせちゃうよ。声ひとつで。


 お岩さんひとりで防衛ライン成立して日本守れちゃう。その後で、ヘンな生き物が大挙して押し寄せてきちゃうけど。


「極秘と言うておるじゃろうが! 大声を出すでないわバカ娘!」


 人間よりもケタ外れに感覚の鋭い絹糸が、体中の毛をブワァッと膨らませて、悶絶しながら絶叫してる。


 なんかもう、涙目になっちゃってて、絹糸かわいそう。


「お、お岩さん、美声に磨きがかかってるね……」


「ありがとう、アマンダ。毎日特製ハチミツドリンクを飲んで、牛たちと一緒の発声練習を欠かしませんのよ」


「……牛の発声練習って、なにそれ……?」


「コツはノドの奥を開いて、音を胸に響かせますの。こうですわ。『ラララ~!』」


「やかましいわい! じゃから、大声を出すでない!」
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