君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人の握りしめる手の力とは裏腹に、きゆを見つめる目は優しさに満ちている。
それでも、きゆは何も言えなかった。
流人の言おうとしていることは、頭の中では十分に理解できる。
だって、それは、きゆが心から望んでいたことだから。
頭では分かっていても心が不安で潰されそうだった。
流人は私の元へ本当に帰ってこれるのかと…
「分かった… それがいいと思う…
大丈夫、私は、流ちゃんを信じて、この島で待ってるから…
信じて待ってていいんでしょう?…」
我慢して堪えていた涙が意思とは関係なくこぼれ出した。
きゆが流人の手を両手で力強く握り返すと、流人は優しくいつもの爽やかな笑顔をきゆに見せる。
「バカか、そんな当たり前な事聞くなよ。
2月に一回は帰ってくる。それで、3月に俺が帰って来る時は、きゆを迎えに来るときだから。
だから、3月になったら俺とこの島を出る。
そのつもりでちゃんと準備してて、分かった?」
きゆはまた大粒の涙をポロポロ流し出した。
「もし……
もし、流ちゃんのご両親が賛成してくれなかったら?…」
流人はきゆの涙をティッシュでぬぐいながら、小さく頷いた。
「その時にはまたその時に考えよう。
どういう状況でも、俺が3月にきゆを迎えに来ることには変わりはないから。
だから、ちゃんと、準備しとくんだぞ」