君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
その日の夜は、流人はきゆの実家へ行った。
急に東京に帰ることになった理由を丁寧に説明をし、きゆとは必ず結婚しますと何度も会話の端々にその言葉を繰り返した。
「流人先生、そんなに無理はしないで下さい。
こんなきゆのためにそう言ってもらえるだけで、私達は本当に幸せです。
でも、先生の家の事情もおありだろうし、もし、上手くいかなくても全然気にしないで下さい。
きゆは、ここで私達が、大切に幸せに守っていきますから…」
きゆの父親の恭一は涙ながらにそう言って、流人に頭を下げた。
「お父さん、もし上手くいかなくても、僕は、きゆをもらいに来ますから。
やっぱりきゆは渡さないなんて、言わないで下さいよ」
流人はこんな時でも皆を笑わせた。
絶対的な約束は決してしない。
上手くいったら迎えに来ますとか、許しを得たら迎えに来ますとか、そんな事は決して口にはしない。
流人にとってはそんな事は無意味なことだったから。
きゆを自分のものにすることだけが流人にとっては大切なことで、誰かの影響でそのことを諦めるなんて、地球がひっくり返ってもあり得ない。
きゆの家からの帰りの車の中、心なしか元気がないきゆを流人は力づくで抱きしめた。
「俺がいないからって不安になんかなるなよ。
たったの3か月だろ。
その後は死ぬまで一緒にいれるんだからさ」
その3日後、流人は東京へ帰って行った。