君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「流ちゃん、そんな事言っちゃだめだよ…
だって、役場の人達が良かれと思って、準備してくれたんだから」
流人はソファの上でふて寝している。
「俺、しばらくは病院で寝泊まりするよ。そんなの当直で慣れてるし。
役場の人にも、俺の方からそう言うから心配しないで」
きゆは流人の気持ちも痛い程分かるため、何も言えなかった。
確かにここは、田舎育ちの私でさえちょっと寂しいと感じてしまうから。
「あ、きゆ、忘れた」
流人はそう言うと、玄関に置きっぱなしになっているスーツケースを持って来た。
きゆをソファに座らせ、そのスーツケースをきゆの目の前に置く。
「きゆちゃん、開けてみ」
きゆがそのスーツケースを指さすと、流人はおどけたふりをしてうんうんと頷いた。
「え~、なんか、洗濯物とか飛び出してきたら嫌だな」
「う~~ん、多分、それはないと思う…」
きゆは流人の顔をチラチラ見ながら、思い切ってそのスーツケースを開けてみた。