君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



流人はソファから下りて、きゆの足もとに座った。


「今日で、流ちゃんは浮気はしてなかったって、分かってくれた?」


流人はホッとした表情を浮かべ、小さな声でそう聞いた。


「……うん」



「よかった~~」


流人はきゆの手を取り自分の頬へ当てて、少年のように微笑む。



「流ちゃん、今度は私の話を聞いてくれる?」


きゆは、自分があの短い期間に長年勤めた大好きな病院を辞め、10年間住んだ東京の街に別れを告げた本当の理由を、流人にちゃんと伝えなければならないとやっと思えた。

あの時は流人に裏切られた思いが先走り、勢いの中で決断したと思っていたけれど、本当はそうではない。
今になって思えば、あの時の決断は偶然のような必然の出来事だった。


「流ちゃん、私は……」


ダメだ…涙がでてくる。
本当は誰にも話したくなかったけれど、流人にはちゃんと話したい…
私自身のコンプレックスとやるせない思いは、少しだけオブラートに包んで…


「きっと、私がここに帰ってきた理由は、流ちゃんに浮気をされたって思い込んだからじゃない。

最初はそう思っていた…
流ちゃんはもう私の事が嫌いになって、別れたいって思ってるって、勝手に決めつけてた。

でも、本当は……」









< 61 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop