君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人は、震えるきゆの手を力強く握った。
きゆの心には大きな穴が開いていて、今の流人は、その穴を埋める術さえ分かっていない。
でも、何を言われてもどんなに拒否されても、俺は動じない覚悟はもうできている。
「本当は…
流ちゃんとつき合うようになった最初の頃から、私はいつも不安で怯えていたの。
だって、病院でも人気者の跡継ぎの若先生が、何で私なんかとつき合ってくれてるんだろうって。
流ちゃんも知ってもとおり、私はこんな小さな島で生まれて、平凡で普通の父と母の元に生まれて育った。
ううん…
平凡とも違うのかもしれない…
島の暮らしは、都会の平凡な暮らしとは、また違うもの…」
「きゆ、でも、俺は…」
「流ちゃん、私に話をさせて…」
「流ちゃんも平凡とは違う…
代々続いている大きな総合病院を背負っていかなければならない大切なお医者様…
10代の頃に出会ってればこんな事なんて考えなかったのかもしれないけど、でも、もう私も20代後半で、その歳の女性が夢見るように私だって、やっぱり結婚を夢に見る。
でも、流ちゃんとはできない…
流ちゃんと私が結婚なんてできるはずがない…
つき合っている間もずっと、この不安は私の心の奥底に居座ってた。
……でも、流ちゃんの事がたまらなく好きになって……
……でも、きっと、いつかは捨てられるってその不安も大きくなって……」
きゆの心の叫びは止まらなかった。
涙の粒を伴って次から次へ落ちてくる。