君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「は~~~??」
流人はさすがに封筒を折る手を止めてきゆを見た。
「だって、流ちゃん、歌うのめっちゃ上手いじゃない。
東京の病院では、流人先生は歌手でもやっていけたなんて、皆言ってたんだから。
私も流ちゃんの歌声をまた聞きたいし、ねえ、どう?」
「ねえ、どう?って……
そんなぶっ飛んだ話聞いた事がないよ。
だって、今日の夜の話だろ??
無理無理、いくら俺でもそんなカラオケ大会だなんて、緊張して声も出ないよ」
きゆはわざと大げさに悲し気にため息をついた。
「急なキャンセルが二人も出て、時間も内容も大幅に変えなきゃなんないの。
そのキャンセルの一人の人は、去年の優勝者で、隣の島から来る人ですごく上手かったらしくて、島の人達皆が楽しみにしてたみたいなんだ。
流ちゃん、ダメ? いい思い出になると思うよ…
流ちゃんの歌声なら皆喜んでくれると思う。カラオケ大会もめちゃくちゃ盛り上がると思うんだけどな…」
流人はまた封筒を折り始めた。
そんな恐ろしい事俺にさせるなよみたいなすねた目をして。
でも、きゆは、諦めきれなかった。
流人の歌声はこの島のカラオケ大会にはもったいないくらいレベルが高いもので、軽く歌う程度で皆を感動させることができたから。