君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
それから幾日が過ぎ、いよいよ夏祭りの当日になった。
きゆは名目上は実行委員会の会計係となっているが、実質は雑務全般を任された何でも屋だ。
土曜日に夏祭りが重なったため午前は病院の仕事をこなしながら、空いた時間に商品券を封筒に入れる作業に励んでいた。
「今日は病院に来る人なんていないから、閉めてもいいよ」
流人は暇そうにきゆの仕事を覗きながらそう言った。
「ダメだよ。
土曜日に半日病院を開けるのは、島の人達の希望でそうなってるんだから」
「みんな、夏祭りにてんやわんやで来る人なんていないと思うけどな」
流人はブツブツ言いながらきゆの仕事を手伝った。
きゆのしている事を真似て封筒に商品券を入れている。
「これは何に使うやつ?」
流人はは手を動かしながらきゆに聞いてみた。
「これはカラオケ大会の参加賞で配る景品。この島の祭りはカラオケ大会が目玉なの。
隣の島とかからも歌の上手い人が集まるくらい」
「ふ~~ん」
きゆは急にあることを思い出して手を止めた。
「流ちゃん…」
必死に封筒のふたの部分を折り曲げている流人は、顔を上げずに目だけできゆを見る。
「流ちゃん、カラオケ大会に出ない?」