君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
病院に着いたきゆは、さっきよりひどくなっている雨風に心臓が破裂しそうだった。
とりあえず、病院の中を片付ける事に専念した。
コンクリート建てではあるがかなり古くなっている病院の入り口や窓を見て回り、閉まりが悪い窓の箇所にはガムテープを貼ったり、隙間に新聞紙を詰め込んだりして忙しく過ごした。
そうでもしないと、居ても立っても居られなくなる。
流人を追いかけてあの場所へ車を走らせたくなる。
もう辺りが暗くなってきた。
時計を見ると、流人が帰って来ると約束した時間はとうに過ぎている。
小さな島の田舎町は、夜になるといい意味でも悪い意味でも外は真っ暗になる。
島で生まれ育った者でさえ物悲しく心細くなるのに、こんな嵐の中、もし流人が立ち往生していたら?がけ崩れにあっていたら?、そんな事ばかりを考えて、きゆの体と心はバラバラにちぎれそうになっていた。
すると、突然、携帯が鳴った。
「もしもし、瑛太?」
きゆは瑛太の声を聞いて泣きそうになる。
「大丈夫か?何かあった?」
瑛太の声も切羽詰まっていた。どこか外にいるのだろう、雨と風の激しい音が聞こえてくる。
「……ううん、大丈夫。
本当に困ったらまた電話するから…
瑛太も気をつけてね…」