君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



きゆは何度も何度も瑛太に電話をするが、瑛太の電話は話し中の音が鳴るだけで全くつながらない。

瑛太に助けを求めれば、きっと何とかしてくれるという一縷の望みさえ叶わなかった。

きゆと本田がセンターに着くと、そこには、まだ誰一人避難をしている人はいなかった。
時間を追って台風は近づいているのに、避難場所となっているセンターの中にある大広間はガランとしている。


「今から皆さんやって来るんですよね?」


きゆはそこに待機している役場の職員にそう尋ねた。


「若い連中がお年寄りの所に迎えに行ってるから、そろそろ集まると思うんだけど。
それより、本田さん、本当にラッキーだったね。
本田さんの住まいがあるあの地域は、今回はかなりヤバいらしくて、本田さんがここに来るって教えたら、消防の奴らは、皆、胸をなで下ろしてたよ」


本田はきっと流人の事を思っているのだろう、険しい顔で窓から見える外を見ていた。


「じゃ、私、病院へ帰りますね。
本田さん、何かあったらすぐに連絡しますから」


きゆは小さな声で本田にそう言うと、本田はポケットかららくらくホンの携帯を取り出しきゆに見せた。
きゆは本田の携帯番号がカルテに書いてある事を思い出し、大きく頷いてセンターを後にした。







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