御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
さっきまでのこわい表情は消して、優しい笑顔で話しかけてくれる。

「じゃあ、行こうか?店を予約してあるから」

でも、歩き出しても隣に並んではくれない。私の数歩前をさっさと歩いていく。
前は一緒におしゃべりしながら歩いたのにな。

その背中が全てを拒絶してるみたいで、話かける事も出来ないまま歩いた。



今日のお店は小さな洋食屋さん。外観は昔ながらの古い喫茶店なのにカランカランと鳴る引き戸をくぐるとシックな内装で照明は温かなオレンジ色。
「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた店員さんも落ち着いていて店の雰囲気に溶け込んでいる。

「遅くなってすみません。予約した垣内です」

係長が答えると一番奥のボックス席に案内された。奥まっているのと、太い柱のせいで他の席の視線が気にならない。

「すみません。私が遅くなったせいで」

席についてすぐにあやまると、小さく首を横に振られた。

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