御曹司様のことなんて絶対好きにならない！
「分からないですか？こんなに分かりやすいのに？」

ちょっと意地悪に問いかけたタイミングで店員さんがメニューと水を置いてくれる。

きっと私達が言い合っているから注文を聞くタイミングを見計らっていたんだろう。
お店に申し訳なくて、私達はすぐに議論を中止して注文をした。わたしはオムライスで係長はビーフシチュー。食後のコーヒーとデザートも一緒に注文しておいた。


キッチンに向かう店員さんを見送って、係長が話を再開する。

「すまない、君がなんで嬉しそうなのか本当に分からない。だって俺は１度も香奈美さんを守れなかったんだよ？」

「女は守ってくれた回数より、守ろうとしてくれた回数の方が嬉しいんですよ。恋愛経験豊富そうなのに知らないんですか？」

嬉しくて楽しくて。クスクス笑い出した私に係長が困惑してる。

「‥‥俺の事、どんな想像してるのか知らないけど恋愛経験なんて豊富じゃないよ。立場や金を目当てに近寄った人間は相手にしなかったし」

ちょっと拗ねたように呟く。
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