御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
紫陽花亭の限定ランチは数種類の小鉢、季節のお刺身と天ぷら、更にフルーツと食後のコーヒーも付いた松花堂弁当だ。
味もさることながら、そのボリュームと何より美しさが近隣OLの心を掴んでいる。

ただ、限定20食というのが難点で。オフィスから店まで近い立地であっても昼休憩開始と同時にダッシュをしないと食べられない、レアランチなのだ。

2人の私達はボックス席ではなくカウンター席に通された。坊っちゃまの隣に始めは緊張したけど、目の前に料理を出されるとそんな事は一瞬で気にならなくなった。

「うっわぁー!綺麗!美味しい!」

念願の紫陽花亭の料理を満喫していると、横からの視線を感じる。

「ホント、香奈美さんは美味しさに食べるね。一緒に食べてるだけで俺まで幸せな気持ちになるよ」

箸をもったまま、こちらを向いて微笑んでいる坊っちゃまは本当に嬉しそうで、赤面してしまう。

「‥‥そんな事いってないで、係長も食べて下さい。早く食べないと置いてっちゃいますよ」
< 21 / 148 >

この作品をシェア

pagetop