御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「で、どうするの?私としては、最低でももう1回は食事に行って香奈美自身の気持ちの確認した方がいいと思うけど?」

お姉さんのように助言してくれる知恵ちゃんが眩しく見える。やっぱりこんな時に頼りになるのは恋愛経験の豊富な友だちだ。

「‥‥実は金曜の夜にゴハン行く約束した」

告白すると、知恵ちゃんは「おぉっ」と声を出した。

「さすが敏腕営業マンは機会を逃さないなー。すでに次の約束を取り付けたか」

うんうんと頷いた知恵ちゃんは何か納得したらしく、立ち上がった。

「香奈美はさ、難しい事を考えずにとりあえず坊っちゃまに任せてみたら?」

なぜか機嫌良く自分の席に戻る知恵ちゃんの背中を見ながら、私はふぅっと息を吐いた。


知恵ちゃんはいつも恋愛に積極的になれない私を心配してくれている。
その視点で見れば、確かに坊っちゃまからの誘いは何かのきっかけになるかもしれない、

でも、私は迷ってしまう。
これまでと同じように、また受け身の恋愛ではなにも変わらないんじゃないだろうか。
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