御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
4.
金曜の夜の食事は結局キャンセルになった。坊っちゃまに突発的な仕事が入ったのだ。

キャンセルを伝える時、坊っちゃまは申し訳なさ全開にそれはもう低姿勢で謝り、次回の提案もしてくれたけれど、それはまたその時に決めましょうと、あえてキチンと約束はしなかった。

食事がキャンセルになって密かにほっとしていたし、正直心の中のぐちゃぐちゃを整理したかったから。


しかし坊っちゃまは引かなかった。この機を逃すつもりはなかったのか、偶然なのか。



翌週月曜日、課長に呼ばれた私は固まった。

「鈴木君にはしばらく、垣内係長のアシスタントをお願いしたいんだ。君なら書類作成もスケジュール管理も安心だし」

子煩悩な課長がその雰囲気のまま穏やかに言う言葉に文句は言いづらい。きっと課長はこの人事が良いと本当に思って、私を起用してくれたのだろう。

でも、でもでもでも!
これ以上坊っちゃまに分かりやすく近づいたら、私は身の危険を心配しなければいけなくなるだろう。
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